第2章:上 一方的再開

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 俺がやってきて、数分もしないうちに委員会は始まった。 「それでは20**年度第一回保健委員会を始めます。まずは自己紹介から始めましょう」  当面の司会進行役となった三年生の男子はそういうとまず自分から名乗った。そうして次に俺達一年生が座っているあたりに目を向ける。次はお前らが自己紹介しろ、ということらしい。口で言え。  俺以外の一年生達はいきなりのことにどうしようかとまごついている。仕方がないので、まずは俺が立ち上がって自己紹介する。 「一年A組、保健係の黒沢です。よろしくお願いします」  そう言ってぺこり、と頭を下げる。オリジナリティの欠片もない自己紹介だが、そもそも自己紹介にオリジナリティを求める方が間違っている。周囲からの気のない拍手を受けながら俺は着席した。  俺の挨拶が終わると、その後はそこそこスムーズに自己紹介は進んでいった。分かっていたことだが、俺以外の保健係の連中も一周目と全く同じだった。従って顔も名前も大体は覚えている。自己紹介の間は退屈だった。 「…………」  俺は自然に、二見さんの方へ目を向ける。セミロングの黒髪ストレートに白い肌。微妙に着崩した学校指定のブレザーや、鋭い目元の感じも俺の記憶どおりだった。  俺は彼女と一方的な再会を果たした。  二見湊。  彼女は異能力者だ。  そして現在はアスガルドにも、敵対組織(ナグルファル)にも所属していない在野の能力者。  当然向こうは俺のことなど知る由もないだろうが、俺は彼女のことをよく知っている。  一周目の世界では俺と彼女はよくペアを組んで任務に出ていた。それは俺の能力が剣の強化という超近距離的なものであるのに対して彼女の能力が遠距離特化していた為、相性がよかったからだ。彼女を早いうちにアスガルドに引き入れておくことは重要なことだ。 「?」  ずっと見ていたからか、二見さんが俺に気付き、目が合った。  しかし、丁度そのタイミングで彼女に自己紹介の順番が回ってきた。席からゆっくり立ち上がる。 「三年C組。二見湊だ、よろしく」
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