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破壊した扉の向こうには場違いなほどに豪奢な部屋が存在していた。まるでおとぎ話のお姫様でも住んでいそうなその部屋の一番奥には天蓋付きの巨大なベッドがあり、その上には安らかな顔で寝息を立てる少女の姿があった。
少女の顔を見て、俺は改めて心を抉られるような痛みを感じた。今から俺がしようとしていることは、俺に消せない罪を負わせる。
分かっているんだ。
しかし、それ以外に方法はない。
「トキヒメ」
俺は少女の名を呼ぶ。少女は目覚めなかった――否、もはやその力も残っていないのだろう。
少女、トキヒメは残された唯一の希望の為にその能力の全てを使い、自ら深い眠りに落ちていったのだ。
能力発動の準備は整っている。後はトリガーを引くだけ。
俺は血と汗に塗れた右手で、もう一度剣を強く握りなおす。刃を少女の真っ白い首筋に添えた。
能力発動の条件、それは……。
「すまない。約束、守れなかった」
最後の言葉は、口に出したのかどうかすら、分からなかった。
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