第2章:上 一方的再開

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 二見さんが喋った瞬間、家庭科室内がにわかにざわつくのが分かった。  二見さんは美人だった。  いわゆるクールビューティ系の大人の女性で少し話しかけづらい雰囲気を纏っているが、それもまた魅力の一つと評判である。  自己紹介で二見さんの存在を始めて認識したと思しき一年B組の保健係(遠藤和仁くん。盗撮マニアの変態)や一年C組の保健係(星野雄介くん。どM、足フェチ)、一年D組の保健係(佐伯ゆう子さん。百合、これ以降二見さんをお姉さまと呼ぶようになる)らが呆然と二見さんの顔を眺めていた。  二年生以上は一応存在くらいは知っていたはずだから多少は冷静だが、それでもざわついていることには変わりない。どんだけ学校中の生徒を虜にしてるんだよ二見さん。  しかし恐ろしいことに、二見さんには自分が美人であるという自覚がない。今のざわつきにも怪訝な顔こそしたものの、理由が分からなかったようで、小首を傾げて着席する。そのしぐさもまた実にサマになっていてよかったのだが、それは置いておいて。 「じゃあ、全体の自己紹介も終わったということで次は委員長と副委員長の指名に入ります。では委員長に――」 「二見さん!」「二見センパイ!!」「お姉さまがいいです!」「二見さんの命令なら聞ける!」「無理難題押し付けられたい!」「オレはハイヒールで踏まれたい!!」「足を舐めたい!」「虐げられたい!!」  変態の大合唱だった。これ以降保健委員会は『女王二見と十一人の奴隷達』などと呼ばれるようになるのだが、そんなことはどうでもいい。  波奈南高校のクラスは一学年四クラス掛ける三学年で保健係は一クラス一人。つまり保健委員会は総勢十二人で構成されており、奴隷の中にはどうやら俺も含まれているらしいのだが、それもどうだっていい。  肝心なのは、異例の早さで二見さんの委員長就任が決まったということだけだった。
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