第2章:上 一方的再開

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 その後、体力を使い果たした変態達(と書いて保健係と読む)によって副委員長は先ほどまで進行を担当していた三年生の広瀬さんに決められ、その日の委員会はお開きとなった。いち早く二見さんが家庭科室を後にし、なんとかお近づきになりたい変態共がRPGの仲間キャラのように列を成して後についていった。俺一人、ぽつんと家庭科室に残される。さて、このあとどうしようか。  とりあえず最後に残った者の義務として家庭科室の戸締りをして、鍵を職員室に返しにいく。自分の席で暇そうにお菓子を食べていた浅井先生が俺に気付いて、「頑張ったごほうびだよー」と言ってお菓子を分けてくれた。ホワイトロリータだった。ジョークとしてはなかなか悪くない。先生はロリコンに好かれそうな外見をしているし。  ホワイトロリータを貪りながら高校を後にする。二見さんのことは気になるが、先に昨日の約束を果たしておこうと思った。日比谷のところに顔を出しに行こう。  ここで波奈南高校と俺の下宿のアパート、そしてアスガルド地下支部に繋がる雑居ビルの位置関係について説明しておこう。  高校とアパートはどちらも波奈市の南区にあり、距離はおよそ徒歩で十分足らず。ちなみに高校のほうがアパートより北にある。  雑居ビルは北区にあって、アパートからは自転車でも二十分はかかる。  つまり何が言いたいのかというと、一旦家に帰って自転車で支部まで行くのとこのまま歩いていくのではどちらが速いのかよく分からないということだ。普通に考えれば自転車で行く方が速いのだが、そのために一度家まで引き返すのがシャクだ。  これは実に悩ましい命題で、一周目の三年でも明確な答えは出なかった。強いて言えば登校時から自転車で来ればいいという所だ。  ちなみに今日自転車で登校していないのは、新入生はまだ学校の駐輪許可が取れていないからだ。無許可で駐輪すると撤去されてしまう、マジで。  いろいろ考えた結果、帰りのことも考えると、自転車を取りに戻った方がよさそうだ。そう思って俺は南に進路を取る。行きとは逆向きに歩いて、慣れ親しんだ我が家ことボロアパート『整然荘』に辿り着く。そこでアパートの建物の前に一人の少女が立っているのが目に入った。  赤毛でウルフカット。小柄で、なんか全体的に犬っぽい。そいつの名前を俺は知っていた。  彼女の名は……。 「………………えーっと、誰だっけ?」
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