第2章:上 一方的再開

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 猫平かなめのバカさ加減は相当なものである。  具体的にいうと、無知、不注意、単純、そして人の話を聞かない。  バカ四大要素を全て兼ね備えたバカのハイブリッドにしてアルティメット。口の悪い友人がそう言っていたのを思い出す。  お使いを頼めば財布を忘れ、届け物を頼めば道に迷う。  自転車に乗れば転び、パソコンを触らせれば間違いなく壊す。  アスガルド内においても、本来彼女の異能は戦闘向きであるため俺が所属していたのと同じ、戦闘班に配属されるはずだったところを、あまりにも危なっかしいということで、直接荒事に関わることの少ない情報探索班に回されたという異色の経歴の持ち主であった。  ……それこそ、よく正しく俺のアパートまで辿り着けたもんだと褒めてやりたくなる。 「…………」 「わっ、わわっ!! どうして! 頭を撫でるんです!?」  おっと。つい無意識のうちに孫を迎える祖父の気分に浸っていた。よく一人で来れたねー偉いねー、と。  猫平は「うぅ~」と唸っていたが、不意に自分の仕事を思い出したように言う。 「ときに! ユウさん!! 本日は! 支部で日比谷支部長と会うご予定では!?」  訂正していないので当然だが、名前は間違えたままだった。せめて苗字で呼べば良いものを。  どうせ訂正しても覚えないと思うので、それは後回しにして俺は質問にだけ答える。 「ああ、そうだな。今から行くつもりだった」  そういえば、俺が学校から直接支部に向かってたらコイツはどうなっていたんだろうか。おそらくその時は捨てられた子犬のように一日中うちの前で俺の帰りを待ち続けてたんだろうな。……一旦家に戻ってきてホントによかった。  俺は正しい判断をした自分を心の中で褒めつつ、猫平を伴って支部へと向かった。
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