第2章:上 一方的再開

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 猫平は徒歩で来ていたので、俺一人だけ自転車に乗るわけにもいかず、結局俺達は歩いて支部に向かうことにした。  道中、俺と猫平は適当に雑談をしつつ歩いた。主に猫平の質問に俺が答えるという形でそれは進行していた。  年齢や身長、好きな食べ物など他愛のないものから俺の持つ異能やこれまでの経歴など、その内容は多岐に渡った。なかにはそうそう人に話すべきではないプライベートな内容もあったが、どうせ猫平は翌日になれば覚えちゃいない。別にいいだろう。 「ユウさんは! 貧乳派! ですか!! ちなみに! わたしは! Bカップです!!」  ……いや、訂正。全然よくなかった。  何故だ。どうして俺はいつの間にかこの小娘と好きな胸のサイズの話なんかしているんだろう。会話している本人にも気付かせない高等な誘導尋問だろうか。そうだとすれば猫平は情報班で十分やっていけると思う。多分違うけど。  後大声で叫ぶのやめろ。買い物帰りの主婦の視線が痛い。  俺達は丁度今、波奈市の北区と南区を分ける川に掛かる橋の上を歩いている。この辺りまで来ると道路が広くなり、車の数が歩行者の数を上回るようになるが、それでも近くに大手のスーパーがある影響で両手に買い物袋をぶら下げたご婦人としばしば遭遇する。頼むからそういうときに胸の話とかしないでくれ、いろいろと駄目すぎるだろ。  そんなこんなで俺は胃に重篤なダメージを負いつつ、なんとかアスガルドの支部に繋がるエレベーターのある雑居ビルに到着した。 「んで、猫平」 「はい!?」 「日比谷はどこにいるんだ? 支部長室か、それとも司令部とか」  だいたい用のないときは支部長室にいる日比谷だが、局員への指示などは司令部で行われるのが基本だ。昨日は読みが当たって支部長室にいたが、今日がどうかは分からない。日比谷から直接俺を連れてくるよう頼まれた猫平に訊くのが確実だろう。  まあ、コイツが覚えていれば、の話だが。 「すみません!! 忘れました!!!」  猫平は無駄に元気よくそう言った。  あ、そうですか。
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