第2章:上 一方的再開

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 結局、俺のアパートの前にやってきただけで何の役にも立っていない猫平の頭をはたきつつ、俺はとりあえず支部長室ではなく、司令部に向かった。司令部は支部地下二階にあり、支部長室よりも比較的近いからというのがその理由だった。  エレベーターで地下二階まで降り、案内板に目をやる。  アスガルド波奈市支部の地下一階から三階までは、おおよそ完全な円形に近い形をしている。その中心部に今乗ってきたエレベーターがあり、東西南北に大きな廊下が通っている。その廊下で切り分けた区画をそれぞれ北東ブロック、北西ブロック、南東ブロック、南西ブロックとすると、昨日訪れた訓練所は地下二階の北西ブロックにあり、司令部はそこから点対象に位置する南東ブロックにあった。  エレベーターホールから南側の廊下に進み、突き当たりを左へ。そこからは円形に緩くカーブを描いている廊下を通って俺達は司令部の自動扉の前に立つ。この自動扉は局員のIDとパスワードがなければ通れないロックが掛けてある。俺はこの二周目の世界ではまだIDを入手していない為、扉を開閉することが出来ない。つまりどういうことかというと、ようやく猫平の出番である。 「開けてくれ」 「了解です!! ユウさん!!」  頼もしい声を上げ、猫平は着ているパーカーのポケットを探る。おそらくはそこにIDカードとパスワードのメモが入っているのだろう。パスワードを紙にメモしておくのは本当はルール違反なのだが、まあそこは猫平なので仕方ない。  猫平は慌しくポケットを探っていたが、唐突にその動きをピタリと止める。  そして回れ右して俺と向き合うと、 「ユウさん!! カード! 失くしました!!」 「バカ野郎!!!」  俺は力いっぱい猫平の頭を叩く。スパーンと、とてもいい音がした、 「お前、どこで失くした!? 場所によっては大問題だぞ!!」  最悪支部の中で落としたのならまだいい。やばいのは支部外で落としていた場合だ。仮にも国家の秘匿機関であるアスガルドの施設進入用のIDだ。重要度は学生証や免許証の比ではない。猫平はそのやばさがピンときていないのか、何だかぼんやりしている。少しは焦れよお前。 「あああ……もうマジでどうすんだよバカ……」 「すいません! 探してきま……あぅっ!!」
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