第2章:上 一方的再開

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 仕事がないというのは異能による事件が起きていないということであり、平和の証拠である。だが、こうも堂々と給料泥棒が行われている現場を見るのは心が痛む。アスガルドの局員は一応公務員みたいなもので、給料は国民の血税で賄われているというのに。  まあなんにせよここに日比谷はいないようだったので、俺はデスクのテレビでアニメを見ていた猫平を引っ張って司令部を後にした。 「行くぞ猫平」 「…………」  妙だった。猫平はバカだがけして悪いやつではない。そして先ほど言ったとおり礼儀正しいところもあるやつだ。俺の言葉を無視するようなタイプではないはずだが。 「どうした?」 「ユウさん!! どうしてです!?」 「はあ?」 「何故サエちゃんは! “サエさん”で! わたしは! “猫平”なんですか!!?」  どうも呼び方の差が不服であったらしい。いや、もともとの世界じゃお前も宮鳥も両方苗字で呼んでたんだけど。  それは猫平の知るところではないが。  というか名前で呼ばれるかどうかというのはそんなに重要なことなのだろうか。俺にはよく分からない。  しかし猫平は俺が呼び名を改めるまで、梃子でも動きそうにないようだった。仕方ない、呼び名なんてなんでもいいし。 「行くぞ……かなめ」 「はい! 了解! です!!」  そう言って俺に並ぶ猫平――改め、かなめの頬が少し赤らんでいるような気がしたのは、俺の見間違いだっただろうか。
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