第2章:上 一方的再開

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 猫平……もとい、かなめを連れて俺は来た道を引き返す。司令部にいないのなら日比谷は支部長室だろう。滅多なことがない限り、日比谷はその二箇所以外に出没しない。 「だからもう付いてこなくてもいいんだぞ、かなめ」  俺は、俺の右隣をちょこちょこ歩く犬っぽい少女に声を掛ける。 「いえ! 駄目です! 日比谷支部長のところまで! ユウさんを! 護衛します!!」  やれやれだ。  どうしようもないバカこと猫平かなめに礼儀正しさ以外に美徳を見つけようとすると、それはこの責任感ということになるのだろうか。しかし、こちらは一周回って悪徳となることも多い。まるで忠犬じみたその責任感は、しかし彼女のバカさと組み合わさると、物事をどんどんドツボへと追い込む動力源にもなりかねないからだ。犬っぽいのもほどほどにしろと思う。  そんなこんなで支部長室に辿り着くと、ようやくそこでかなめの仕事は終わった。 「ユウさん!! どうか! どうか! お気をつけて!!」  帰り道、何度も振り返っては手を振るかなめにしばらく応じてから、俺は支部長室に入る。  昨日と同様、無駄に広く、無意味に豪華な部屋の奥にあるイスに座って日比谷は俺を待っていた。相変わらず薄い笑みを顔に浮かべ、愉快そうに俺を眺めている。 「よう。来たぞ、日比谷」  俺が言うと、日比谷は立ち上がり、俺の方に歩いてくる。長身の日比谷は俺よりも背が高い。近寄られると半ば見下ろされるような形になる。 「お疲れ様。猫平ちゃんはどうだった?」  日比谷が訊く。『どうだった?』と。ここで俺が答えるべきことだが、それは『バカだった』とか『犬っぽい』とか、そういうことではない。  途中から気付いていた。どうしてかなめのバカさを十分理解しているはずの日比谷がわざわざ命令して、俺に必要のない護衛をつけたのか。  つまり、逆だったのだ。  俺を護衛するためのかなめではなくて。 「……問題ないな。まだ気付いてないよ、自分が狙われてるってことに」
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