断章02

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 連続する狙撃事件。  犯人は未だ不明で、アスガルドは警戒を強めていた。  そんな頃、俺こと黒沢悠は一人、全く別のことに頭を悩ませていた。 「違う! 俺はストーカーじゃないんだ!!」 「はいはい、ストーカーはみんなそう言うんだ」  友人だったはずの伊藤が冷めた目で俺を見ていた。いやいやお前がそういう感じになるのはちょっとおかしいだろ。おそらく、ここで女性陣の味方に付いて、俺を貶めることで相対的に自分の価値を上げようとでも目論んでいるのだろうが、それは無理な話だ。何故なら俺は無実だし、お前の女性陣からの評価はとっくに底辺に達しており、回復の見込みはないからだ。  俺は現状、二見湊という三年生のストーカーをしていた疑惑で女子から軽蔑の視線に晒されている。この状況から脱する方法は二つ。  一つは二見湊先輩本人に、俺はストーカーではないと証言してもらうこと。しかしこれは俺と二見先輩の間に面識がない為、難しい。ここで焦って二見先輩に事情を説明して、彼女にまで俺がストーカーだと思われたらそれこそおしまいだ。リスクが大きすぎる。  と、なるともう一つの手しか使えない。  それはすなわち、俺は二見先輩に恋愛的な興味を持っていないと周囲に示すこと。要は彼女がいる振りをするのだ。 「……なあ伊藤」 「なんだ?」 「俺、実は彼女いるんだ」  言った瞬間やつの顔色が変わるのが分かった。おそらくは自分と同じモテない男だと思っていた俺が、いつの間にか裏切っていたなんて、信じたくない信じられない、いやむしろ信じない。そんな表情をしていた。 「ど、ど、どどどどっどどどこの誰だよ彼女って」  可哀想に、ちょっとありえないくらい動揺しながら伊藤が言った。しかし困ったな。完全に口から出任せで言ってしまったから、急に言われても何も思いつかない。名前、名前、えーっと。 「…………猫平?」
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