第2章:下 銃弾と

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 俺はさっそく、諸々の準備を行うため支部長室を後にしようとしたのだが、そこを背後から日比谷に呼び止められた。 「待って。もともとの用事を忘れてないかい?」 「あ」  言われてみれば確かにそうだ。俺がアスガルドの局員となったのが昨日、それも支部長の独断であったため様々な手続きが昨日の時点ではまだ何一つできていなかったのである。とはいえ細々した書類だの施設使用申請だのは俺が日中学校に行っている間に日比谷が済ましてくれていたようなので、俺はそれらの確認と、IDや基本装備の受け取りをするだけなのだが。 「え、と。これが黒沢クンのIDカード、失くさないようにね。くれぐれも施設外で落としたりしないでよ、大変なことになるから」 「…………」  知っています。つい先ほどその恐怖は味わったばかりなので。  その後、日比谷は口頭で俺に局員パスワードを伝えると、くれぐれもメモに残したりしないように念を押してきた。迷ったが、かなめがメモを常に持ち歩いていることと、さっき紛失しかけていたことは言わないでおいた。面倒くさいので。 「じゃ、残りは装備課に届いてると思うから受け取りに行ってきてね。よろしく」 「……了解」  俺はこんどこそ支部長室を後にする。
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