第2章:下 銃弾と

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 装備課は地下二階、司令部の近くにあった。昨日、訓練所に向かう前に木刀を借りにいった所と同じである。 「そういえば、剣も用意しないとな」  能力を発動させるためには別に木刀でも問題はないのだが、持ち歩いていると一昔前のヤンキーみたいでいまいち格好がつかない。個人的には両手持ちの西洋剣が一番しっくりくるので、今度発注しておこうと思う。 「新人局員の黒沢です。装備を受け取りにきたんですけど」  装備課はだだっ広い倉庫のようなスペース一面に剣とか斧とか拳銃とかが放置されたなんとも危なっかしい空間である。その上管理者の趣味とかで室内は常に薄暗い。俺は床に転がっているナイフや金属の破片を踏みつけないように注意しつつ奥まで入っていく。 「おー、こっちだこっち」  ごちゃごちゃした用途不明の物体の中に囲まれるようにして椅子に座っていた女性が俺の接近に気付いて目を上げた。日本人離れした青い瞳で覗き込まれる。埃や機械油でかなり痛んでいるようだが髪も金色で、彼女に欧州の血が流れていることをうかがわせる容姿だ。  名前は知らない。いや、忘れているのではなく。  一周目の世界でも特に名乗ったり名乗られたりするタイミングがなく、ついに知らないままになってしまったのだ。俺は彼女のことを、常に装備課にいるので“装備課のお姉さん”と呼んでいた。そのまんまだ。  装備課のお姉さんは何がそんなに面白いのかニシシと白い歯を見せて笑う。 「これはこれは、期待の新人くんじゃねーの。話は聞いてるぜ。なんでも配属初日から裏切り者を見つけて、やっつけたんだって?」  おおう。  昨日の交戦のことはすでに支部内で噂になっているらしかった。まああれだけ人目に触れるところで派手にやりあえば当然のことか。  ちなみにやっつけたわけではない。上手いこと攻撃をやり過ごして追い払っただけだ。  とはいえお姉さん的にはそんな細かいことはどうでもいいらしく、愉快そうに笑っていた。 「基本装備ならそこに積んであるヤツだ。好きに持ってってくれていーぜ」
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