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ハッとして目を開けると、そこは見慣れた俺の部屋だった。
けれど、よくよく見直せば違和感もある。
部屋の中は、俺の記憶の中のそれよりもやけにあっさりとしていて物が少ない。それこそ丁度、俺が高校進学と同時に一人暮らしをする為ここに引っ越してきた当時のように……。
「あ」
思い出した。
思い出して、しまった。
絶望の中に沈んでいった世界。
目の前で散っていった仲間達。
果たせなかった約束。
俺がこの手で**した少女――
「ぐっ、が、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
頭が割れるように痛い。吐きそうだ。ごちゃごちゃになった記憶。失敗した思い出。絶望。悲しみ。涙。後悔。痛み。苦しみ。託された想い。
そうだ。俺はやり直したんだ。世界は滅亡寸前になって、自分も後一歩で命を失うというところで俺はいつか聞かされていた最終手段について思い出したのだった。能力名。それは時間の巻き戻し。記憶と経験を保ったままで、一度だけ自分の願ったところまで時間を巻き戻す。そんな能力を使って俺は三年前まで戻ってきたはずだった。
枕元に置いてある携帯電話で今日の日付を確認する。
俺の記憶よりも三つ少ない西暦の数字と、『Apr.7』の表示。間違いない。俺は三年前の四月七日まで戻ってきていた。俺の記憶が正しければこの日は確か高校の入学式の日だった。区切りとしては丁度いいところだ。だからこそ《時間遡行》は到着時間をここに設定したのだろうか。
時間は七時半を少し過ぎたところ。学校に行くのならそろそろ準備を始めないとマズい。だが、入学式など今更どうでもよかった。
行かなければ。
異能力者対策組織へと。
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