第1章:上 二周目

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 エレベーターは静かに沈んでいく。旧式なのは見かけだけで、本当は最新式の速度と静かさを備えているのだと、以前誰かから聞いた覚えがある。そうこうしている間にエレベーターは地下三階に着いて、停止した。  エレベーターを抜けた先には無駄に広いホールが広がっている。人は皆無だが、それはこの上の地下一階と二階に集中しているからであり、施設全体では百人ほどが常に働いている。  俺はエレベーターホールから真っ直ぐに繋がる廊下を抜けて、施設の一番奥に向かった。奥に進むにつれ、内装が豪華になっていく。この辺りは施設の役員執務室が集まっている。会社でいえば社長室、学校でいえば校長室や職員室があるような場所なのだ。  視界の端で監視カメラが動いている。それを気にせず俺は進み、大きな木の扉の前で足を止めた。 「……支部長室。来るのは久しぶりだな」  部屋の持ち主が、ドアに鍵をかける習慣を持っていないことは知っていた。遠慮なくドアノブを回して、部屋に入る。  ……入った瞬間、俺は銃を構えた五人ほどの男に辺りを取り囲まれてしまった。 「手を挙げろ」  男の内一人がドスの利いた声で命令する。俺はおとなしく言われたとおりにした。 「何物だ。返答によっては撃つ」 「まー……そうなるよな」  ここは二周目の世界。俺はまだこの組織に属する人間ではないのだからこの歓迎も当然のことだ。  施設に入るエレベーターの仕掛けを知っていて、迷わず施設の最高責任者の部屋までやってくる正体不明の男。警戒レベルは普通じゃないだろう。  だが俺だってわざわざ銃で囲まれるためにこんな目立つ登場をしたわけじゃない。やろうと思えば監視カメラの死角を通ってここまで来る事だって出来た。それをしなかったのはつまり、そっちの方が好都合だったからだ。  アイツなら、きっと俺の行動の意味を理解してくれる。 「……そうだろ、日比谷支部長?」
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