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十年後、桃太郎は老夫婦の愛情を一身に受けて、健やかに成長した。 初めて自らの異質な力について老婦人に相談した日からずっと、桃太郎はその力について誰にも話さずにいる。 時折せがんでくる動物たちの話し相手兼遊び相手になることもあったが、 なるべく周りに知られないように、独りきりの時に人気のないところを選ぶようにしていた。 ある春の日、桃太郎は村のはずれにある丘で一匹の雀と世間話をしていた。 今日は天気がいいとか、隣村で子どもが生まれたとか、そんなありきたりな内容てある。 しかし、夕暮れが迫っていたので、桃太郎がそろそろ帰ろうと腰を浮かせた時、ふと、雀が一つの事件を思いだした。 「そうそう!そういえばこの数日、人間が鬼に襲撃されたというのをよく聞くから桃さんも気をつけた方がいいよ。」 「人が鬼に?」 「うん。なんでも、ある町じゃ大層美人な娘さんがいて その娘さんに鬼がつきまとって、ついには浚っていったそうだよ。」 更に浚われた娘は無惨にも衣服を引き裂かれ、挙げ句首が持ち去られていたらしい、と雀は続けた。 「ひどい話だな…けど、いったいどうして…」 当時、うまく共存していた鬼と人間。 桃太郎の知る限りでは、これまで大きな事件は無かった。 鬼は人間の住む地域に手を出さず、人間もまた鬼の地に手を出さない。 お互いの領域に手を出さないことで均衡を保ってきた。 長らく均衡と不可侵を保ってきた両者が今になってなぜ大きな事件がおこるほど崩れ始めたのか。 桃太郎は疑問に思いながらも、どこかそれが必然であるかのようにも感じていた まるでこうなることが分かっていたかのように…
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