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叩かれた頭をさすりながら美祢さんに抗議する。
「うち、神社とかの娘じゃないんですよ?一般家庭で生まれた普通の人間ですよ?」
「そんなん、とうの昔から知っとるわ。でもあんたが魂の巫女様なんは、ほんま。これは紛れもない事実や」
事実って‥それが本当のことならとんでもない事実なんですけど。現実味もないし。
そうか。これ夢か。じゃないと説明がつかない。
「美祢さん。さっき幕末とか京とかって言ってましたけどトリップなんて出来るわけないですよ。しかも魂の巫女とかよく分かんないし、そんなの漫画とか小説の中だけの話で、うちは夢でも見てるだけ‥」
なんでしょ?と続くはずだったうちの言葉を遮ったのは一振りの刀。
「え」
一瞬にして、うちの首元に白く輝く刀が当てられていた。
「み、美祢さん?え、あの、これ本物ですか‥?」
「どうやと思う?」
夢とは到底思えない、そして偽物とは思えないひやりとした感覚に顔から血の気が引いていく。
「彩葉ちゃん。あんたが今見とるもんは夢やない、現実や。ここは幕末の京。あんたは魂の巫女様。今、目の前にあるもんをきちんと見ぃや」
首元に当てられている刀に少し力が入る。
同時にうちの背中に嫌な汗が流れた。
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