記憶 -第一章-

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「梗夜様に口止めされとるの忘れとったわ‥」 口元を手で覆い、目を逸らしながら呟く美祢さん。 命を狙われる存在って‥ そう言えば、うちを守るためにこっちに連れてきたってさっき言ってたっけ。 でもさ、現代よりも幕末にいる方が死ぬ確率高いんじゃない?動乱の時代でしょ? まあ歴史の中でも幕末は特に好きだし、それはそれで良いけどさ‥。 先程からの突拍子がなさすぎる話の連続に現実逃避をしそうになってしまった。 「美祢さん、さっき言ってた鬼ってなんなんですか?」 気を取り直して冷や汗をかいている美祢さんにそう聞けば、 「ま、まぁいつかは聞かなあかんし‥大丈夫大丈夫‥」 うちからの問いには答えず、顔を真っ青にしながらぶつぶつとなにか呟いている。 「彩葉ちゃん、悪いんやけど鬼については梗夜様から聞きぃ。うちからはこれ以上言えへんから、な?」 「は、はぁ‥分かりました」 必死の形相に、しぶしぶ頷けば美祢さんは胸を撫で下ろし可愛らしい笑顔を向けてくれる。
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