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「いいからごちゃごちゃ言ってねえで付いて来い」
「誘拐?」
「違う」
真顔で間髪入れずに否定された。
「はあ。術がしっかり効いてんのは何よりだがやっぱ記憶がねえとダメだな。話が通じねえ」
ぼそりと男が何か呟いた。
よく聞き取れなかったが次の瞬間、数メートル先にいたはずの男が目の前に現れる。
「はっ!?」
とっさに右手にあるスマホの発信画面を押す。
と、同時に右手首を男に掴まれた。
スマホが手から滑り落ちる。
「暫く寝とけ」
首の後ろに鈍い痛みが走り、あっさりと意識が遠退いていく。
「彩葉、起きたらそこで大人しく待っとけ。沖田を迎えに行かせる。オレは屯所にいるから必ず来いよ。あいつらも待ってるからな」
遠退く意識の中で男の懐かしむような、そんな声が聞こえた気がした。
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