記憶 -第一章-

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「まあ説明せえへんことには始まりまへんな。ここは幕末の京にある『誠屋』っちゅう店や。一応質屋をやらせてもろうとる」 「はあ‥ん?」 今、なにか引っかかる単語があったような? 「美祢さん、今幕末って言いました?」 「せやで‥ってもしかして彩葉ちゃん、梗夜(きょうや)様からなんも聞いてへんの?」 美祢さんがこれまた不思議そうに首を傾げる。 「聞いてないも何も梗夜様って誰ですか?」 「ほんまに聞いてへんの?梗夜様はうちの(あるじ)でな?ほんでうちは梗夜の式神や」 「式神!?」 式神って陰陽師が使うあの式神!?本物!? そう言えば公園で会ったあの男。 「人払いの結界を張ってるからな」って言ってた気がする。 「梗夜様ったら‥迎えが来るまで面倒見とけって言うとったけど、何も知らへんなんて聞いてへんよ‥」 「何か言いました?」 「いや、なーんも言うてへんよ」 にこりと取り繕うように美祢さんが笑う。 美祢さんの話が本当ならあの人は陰陽師ってこと?あんな無理やり人を誘拐する人が? ‥なんか思い出したら首の後ろ痛くなってきた。
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