序章

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私は閉じ込められている。……というより、その物体になってしまったかのように感覚もある。 まるで同調するように、その物体と一心同体。 物に憑いてしまったような感じだけど、私は元々祓う方の人間。 祓魔……それは私の仕事だった。 代々、祓魔を仕事としていた私たちは悪霊から悪魔、悪さをする妖怪まで祓うということをしていた。依頼は絶えない。 父が殆どこなしていたにすぎず、私は見習い程度だったのだ。 けれど、わずか十歳の私に試練が訪れた。 『オ前ガ、祓魔師ノ娘ダナ?』 ある日突然、悪魔に狙われた。 あの時の声は十年たった今でも覚えている。 私が覚えたての祓魔で対抗すると悪魔は呪文を唱え…… 気付いた時には私が物体に封じられていた。 とりあえず生きてるみたい。 まあ、物だから買い取られていくうちに知らない人に引き取られて、 今はすっかり定着している。 十年も経てば物でいることもなれるけど。そうか、ことしで二十歳だ。 今ではすっかり聞き慣れた土方さんの声が、やけに近くに聞こえた、 お昼前の、運命的出会いが、物語の始まり。
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