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「ねぇ、なんのつもりでこんなことを」
口走った百花だったが、直感的に何かを言っても無駄だということは分かった。手首にどんどん手錠が食い込んでいき、言葉は判別のできない声にしかならない。
体中の神経が悲鳴を上げていた。
その時だった。
「ほれ」「おお」「そうじゃ」
老人たちが突如として歓声を上げ始めた。
どこにいたのか、老人達の間から一人の茶髪の若い男性と、真っ赤な服を着た髪の長い女性が、老人たちの手拍子のなか姿を現した。
百花はいきなり髪の長い女性から平手打ちを喰らわされた。
「情けない女。手錠、緩めて」
真っ赤な服の女性の言われるがままに、白い服を着た看護師のような茶髪の男性が、ポケットから鍵を取りだすと、素早く百花に嵌められている手錠を緩めた。
続けて見覚えのある、丸顔の大柄な男性がぐったりとした百花の前まで突き進んできた。
「お譲ちゃん。ごめんなあ。ホントにゴメンなあ。こんなことして悪いって分かってるんだけどねぇ。やっちゃいけないって、よおく分かってんだけどな。なにしろこんな時代だからさ。時代がいけねぇんだな、ほんとよお」
男性は手に大きな器が上に載っているヘルメットのようなものを持っていた。
抵抗することもできない百花に、その特製ヘルメットを男性は強引に被らせた。
「お前たちも起きるんだよ」
博隆ともう一人の高そうなスーツを着て横になっていた男性も平手打ちを喰らわされる。
老人たちからまた嬌声が上がった。
ヘルメットを被らされた三人を老人たちが取り巻いた。みな手にはお手玉のようなものを持っていた。
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