裏切り

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「隆幸、なんとか言ってくれ。隆幸」 一度服を脱いだためか、隆幸の服装は乱れており、顔や上半身に蹴られた傷跡がみえる。 「オヤジ」 「タカちゃん、お父さんでしょ。こんなのかわいそう過ぎる。なんとかしてあげてよ」 「オヤジ。叫んでもどうにもなんねぇんだ、俺ら」 「タカちゃんそんなことないよ、こんなことされて繋がれてたら、誰だっておかしくなるよ」 女の言葉を無視し、博隆はなおも叫んだ。 「隆幸、早く自由にするように言うんだ。母さーん、わたしは母さんに会いに来たんですよ。それなのにこんなことして酷いじゃないですか。母さーん、助けて、助けて」 「ずっと来なかったくせに」 眼鏡をかけた車椅子の老女が、突き放すように言った。 「博隆、お前はもう機会を無駄にしたとよ」 「機会って。なに言ってるんですか、母さーん。母さーん」 「おうおう、人前でめそめそ泣いて。みっもねえったらありゃしねぇよ。ますますスーツが汚れらぁ。汚れちゃっていいんですかね」 タクシーを運転していた男が、汚物でも流すかのようにウィスキーを浴びせてきた。 その様子を見かねたのか、隆幸が博隆の方へと近付いてくる。 博隆は隆幸にすがりついた。
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