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「お前に俺のなにがわかる。なにが分かるんだ」
我を忘れた博隆は、もう何も目に入らないといった風に、手にした革靴を遮二無二振りまわした。
「こいつ、やっちゃっていいんで」
自然と媚びるような口調になっている隆幸が、勝田に伝えた。
「兄ちゃん、親に対してそんな事を言っていいのか。ええ。お前の父親だろ」
そう言いながらも、勝田が分厚いサンダルで博隆に蹴りを入れてきた。
「うぐっ」
博隆の手にしていた革靴が、床の上へと落ちた。
「これはわしのもんじゃ。誰にも渡さん」
やにわに近付いてきた一人の老人が、革靴を拾い上げると、その革靴で博隆を叩き始める。
「サンドバック状態やね、博隆」
まるで大理石に腰かけているように、車椅子に座る博隆の母親が、無情な言葉を博隆に浴びせた。
「待って。なんでもするから助けて下さい、母さん、母さん」
「久々にええ気持じゃろ。すかっとするじゃろ」
勝田の獰猛な蹴りと、思いのほかに強い力の老人たちの打撃で、博隆は腰から崩れ落ちていた。
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