8 哀しい接点

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暫くの間があって、菜々子ちゃんが口を開いた。 「そ‥うなんだ。…忘れられないのかな、課長。」 「うん、それがね、その彼女は自分の病気知って、身を引いたっていうか、嘘ついて課長と別れたんだって。」 「え?じゃあ…」 北島の声。 「はい。…課長の知らないうちに…でも、やっぱり課長も後で知って…。」 居酒屋の賑やかなざわめきの中で聞くにはアンバランス過ぎる話。 私は一言も話せず、ただ胸が痛かった。 「…やっぱり話さない方が良かったかな、でも、なんだか辛くて。」 泣きそうなメグミちゃんの気持ちも分かる気がした。 「…うん、いいよ。ほら、メグ、水飲みなよ?」 ホッとしたようなメグミちゃんに菜々子ちゃんが尋ねる。 「でもその話って本店ではみんな知ってるの?その社員さんみたいに。」 「ん~、どうなんだろ。その社員さん、貝塚課長位の年齢だから知ってたのかも。それにその彼女がバッグ売場の人だったって…。」 本店のバッグ売場…? 「本店の社員さんか。社内恋愛だったんだな…。」 北島がポツリと言った。 ・
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