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暫くの間があって、菜々子ちゃんが口を開いた。
「そ‥うなんだ。…忘れられないのかな、課長。」
「うん、それがね、その彼女は自分の病気知って、身を引いたっていうか、嘘ついて課長と別れたんだって。」
「え?じゃあ…」
北島の声。
「はい。…課長の知らないうちに…でも、やっぱり課長も後で知って…。」
居酒屋の賑やかなざわめきの中で聞くにはアンバランス過ぎる話。
私は一言も話せず、ただ胸が痛かった。
「…やっぱり話さない方が良かったかな、でも、なんだか辛くて。」
泣きそうなメグミちゃんの気持ちも分かる気がした。
「…うん、いいよ。ほら、メグ、水飲みなよ?」
ホッとしたようなメグミちゃんに菜々子ちゃんが尋ねる。
「でもその話って本店ではみんな知ってるの?その社員さんみたいに。」
「ん~、どうなんだろ。その社員さん、貝塚課長位の年齢だから知ってたのかも。それにその彼女がバッグ売場の人だったって…。」
本店のバッグ売場…?
「本店の社員さんか。社内恋愛だったんだな…。」
北島がポツリと言った。
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