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「綺麗な人だって言ってました。名前も素敵だなって思って聞いてたんだけど…えっと、更科…更科、…なぎ」
――ドクン
体の中で音がして、次の瞬間、私は初めて血の気が引くという言葉を体感したと思う。
「更科、凪子…さん?」
震える声を出した私に三人の視線が集まった。
「あ、そうです。凪子さんです。」
「鈴先輩、知ってる人ですか?」
「…田上っ、大丈夫か?お前、顔真っ青だぞっ。」
すぐ近くにいる三人の声が、何かを隔てた向こう側から聞こえるような気がする。
…嘘でしょ?
だって、凪子さんは。
『仕事辞めて結婚するの。』
明るい声だった。
『大丈夫よ、もう鈴ちゃんは一人前の販売員さんなんだから。』
…私にも嘘を?
凪子さん。
…課長。
「田上っ。」
「鈴先輩、大丈夫ですか?」
ハッと気が付くと、菜々子ちゃんが私の横に来て心配そうに顔を覗き込んでいた。
「…大丈夫。ちょっと、酔っちゃったのかも。少し疲れ気味だったから…。」
「送ってく。」
横から北島の声がした。
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