9 憧れ

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「本当に驚いたわ。田上さんが凪子と知り合いだったなんて。」 電話を掛けた翌日が休みだった私は、本店近くの駅ビルのパスタ店で、バイヤーの風間さんと少し遅い昼食を取っていた。 「…私も、驚く事ばかりで。すみません。風間さんなら、って。」 「…いいのよ。」 食後のエスプレッソを飲みながら、風間さんは少し哀しそうに微笑んだ。 「昨日田上さんからの電話の後で思い出したの。何故か支店の新入社員の女の子が慕ってくれて嬉しいって、凪子が言ってた事。…田上さんだったのね。」 多分、そうだろうと思い、私は肯いた。 大好きで、私の憧れだった凪子さん。 迷惑じゃなかったんだ、と今更ながらホッとする。 「凪子は田上さんの入社の時の合宿研修のインストラクターだったのね?」 「はい。」 ・
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