2 その日

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短い通路を抜けるとまず休憩室。小さな流し台、長テーブルと椅子、私物用のロッカーなどがある。 その奥がこの階の事務所になっている。 電気をつけてロッカーに私物をしまい売り場へと足を向ける。 「あれ?」 配電盤を見ると子供服売場の電気が点いている。 「もう誰か来てるのかな?」 エスカレーターの横を抜け売場に向かうと、何か資料を片手に棚に並んだ商品を見ている貝塚課長の姿が目に飛び込んできた。 「…おはようございます。」 声をかけるとこちらを向いて「ああ」というような顔をした。 「おはようございます、田上さん。」 「課長、お早いですね?」 声をかけながらその手元に何気なく目をやった私に照れくさそうな声が返ってきた。 「あ~、子供服の事はよくわからないからちょっと勉強。バイヤーの時も本店でも紳士服専門だったからね。…田上さん。」 貝塚課長が真面目な顔で私の方に体を真っ直ぐ向けた。 「…はい。」 「色々と田上さんに教えて貰う事が多いと思うんだ。これからよろしくお願いします。」 そんな事を言って頭を下げるので恐縮して狼狽えた声が出た。 「えっ、あ、いや、そんな。」 体の前で両手を振る私を見て課長はフッと口元を緩めた。 …あ、また目尻に笑い皺。 ・
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