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「はい、少し…、あ、でも大丈夫です。」
慌てる私を見て凪子さんはクスッと笑った。
「気も使うし、疲れて当たり前よね。それに、田上さん、すごく頑張ってるし。」
「…そうでしょうか。私、この仕事、向いてないんじゃないかって。」
凪子さんは、あら?という顔をした後、ゆっくりと話し出した。
「田上さんは、字が綺麗ね。それに言葉遣いもきちんとしてる。」
「え?」
「これから社会人として頑張ろうって自覚もあるし。」
「…あ、はい。それは。」
「ね、田上さんには沢山良いところがあるし、向いてないなんて思うのはまだまだ早いわ。」
凪子さんの言葉を嬉しく思ったけれど、その時の私は不安の塊だった。
「でも…、接客が、出来るのかなって。基本の言葉も笑顔で言えないのに…。」
「…そっか。やっぱり緊張するのかな?」
「…多分、そうだと思います。」
「笑顔で接客、は、お客様に気持ちよく買い物をして貰って、また来ていただく為に、なんだけど、」
「はい。」
「ただ売り上げを伸ばす目的だけでは続かないと思うの。でもこれは実際に売り場に立って経験してみないと分からないのよね…。」
そう言った凪子さんは「うん」と多分自身に向かって頷いた。
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