9 憧れ

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翌日、目の前の、私をメガネ~と呼ぶ彼を、友達の笙子に置き換えるのは難しかったけれど、気持ちの持ち方が違ったのかいままでより大きな声が出せたと思う。 そして笑顔はすごくぎこちなかったに違いない。 だけど、その時間が終わった時、向かい合ってた彼がボソッと、 「…出来るじゃん。」 と言ってくれて驚いた。 気まずい顔をして「昨日は悪かったよ」とも。 私はその時初めて、この数日、オドオドしている私の相手をしてくれた彼だって大変だっただろうと思い至った。 「ううん。…あの、4日間ありがとうございました。」 頭を下げた私に、困ったように笑った彼は、「じゃあな」と言って男子が集まっている方に歩いていった。 「…やってみて初めて分かること、変わることもある。」 ぐるりと周りを見ると、此方を見ている凪子さんと目が合った。 恥ずかしかったけれどニコッと笑ってみると、凪子さんは嬉しそうにニッコリ笑い返してくれた。 形からでいいんだよね。 私は凪子さんの様に、背筋をしゃんと伸ばしてみた。 あれからずっと凪子さんは私の憧れの人だ。 ・
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