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「凪子と貝塚君は高卒と大卒だったけど同期入社だったの。」
私もね、と風間さんは付け足した。
「最初はそれぞれ別のグループで遊んでいて、二人が付き合い始めたのはかなり後になってからだったけど。落ち着いていて、仲が良くて、お似合いだった。」
…想像できる。
悲しいのとはちょっと違う様な胸の痛み。
「凪子が自分の体がおかしいと感じ始めた頃、貝塚君は本部付けのバイヤーになって、出張も増えてすれ違いが多くなってた。」
風間さんはそこで一つ溜め息を吐いた。
「だから凪子は隠せてしまったの。頑張ってる貝塚君に心配かけたくなくて…、そして、嘘をついた。」
…どんな、嘘を?
なんだか声が出なくて風間さんを見つめた。
「もう待っていられない。放って置かれた間に、好きな人が出来たって。…後は田上さんが聞いたのと同じよ。」
「…課長は、それを信じたんですか?」
泣きそうで声が震える。
「…凪子は、駆け引きしたり嘘をついたりしない子だった、でしょ?」
それに、と風間さんが辛そうに笑った。
「凪子の友達も、凪子に協力したから。」
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