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テーブルの上に置かれていた風間さんのスマートフォンの振動音にハッとして顔を上げた。
「ちょっとごめんね。」と風間さんがメールを確認する。
「…そろそろ戻らないと。」
「はい。お忙しいのにすみません。…それに、風間さんにとっても辛い話をしていただいて、本当にありがとうございました。」
頭を下げた私に風間さんの優しい声が掛けられる。
「いいのよ。田上さんがこんなに凪子を好きでいてくれたなんて、私、すごく嬉しいの。」
そう言って貰えると少し気持ちが楽になるようだった。
「私も凪子さんに出逢えて、本当に嬉しくて、幸せだと思ってます。」
「…ありがとう。」
風間さんの目が潤んで見えた。
「…あの、貝塚課長には、この事、私が凪子さんを知ってる事は、言わないで貰えますか?」
課長が苦しみから立ち直っているならば、もうわざわざ話す必要は無い事だと思う。
「……分かったわ。」
お店を出て、二人で一階まで降りる途中。
「この前K社に行った時、私が貝塚君に、もうそろそろいいんじゃないか、って言ったでしょ?」
「はい。」
「凪子は、貝塚君に幸せになって欲しいと、願ってたの。」
そう言った風間さんは私の顔をじっと見つめた。
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