9 憧れ

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テーブルの上に置かれていた風間さんのスマートフォンの振動音にハッとして顔を上げた。 「ちょっとごめんね。」と風間さんがメールを確認する。 「…そろそろ戻らないと。」 「はい。お忙しいのにすみません。…それに、風間さんにとっても辛い話をしていただいて、本当にありがとうございました。」 頭を下げた私に風間さんの優しい声が掛けられる。 「いいのよ。田上さんがこんなに凪子を好きでいてくれたなんて、私、すごく嬉しいの。」 そう言って貰えると少し気持ちが楽になるようだった。 「私も凪子さんに出逢えて、本当に嬉しくて、幸せだと思ってます。」 「…ありがとう。」 風間さんの目が潤んで見えた。 「…あの、貝塚課長には、この事、私が凪子さんを知ってる事は、言わないで貰えますか?」 課長が苦しみから立ち直っているならば、もうわざわざ話す必要は無い事だと思う。 「……分かったわ。」 お店を出て、二人で一階まで降りる途中。 「この前K社に行った時、私が貝塚君に、もうそろそろいいんじゃないか、って言ったでしょ?」 「はい。」 「凪子は、貝塚君に幸せになって欲しいと、願ってたの。」 そう言った風間さんは私の顔をじっと見つめた。 ・
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