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私の中の凪子さんの存在は大きい、と改めて知る。
それは少しも嫌な事では無いけれど、今だけは少し辛い。
「…そうか、憧れの人、だったのか。」
その日の社員食堂は空いていて何となく静かだった。
私と凪子さんの関係を聞いた北島が腕組みをしながら視線を落とす。
「うん、凪子さんがいなかったら、この仕事ここまで続かなかったかも。」
「そうか…、辛いな。」
「…うん。」
ふと北島の目が私のトレイの上を見て、眉根を寄せた。
「…ちゃんと食えよ。」
「あ、うん…。」
少し食欲が落ちているのは確かで、ランチを半分程食べた所で箸が止まってしまっていた。
「忙しい時に体調崩すと大変だし…心配だろ。」
そう言って真っ直ぐに見つめてくる北島の眼差しは優しい。
「ん、分かってるよ。ありがと。」
「…その人だって、元気なお前でいて欲しいから、嘘つい…」
北島の視線が上に向き、急に言葉を切った時、頭の上の方から声が聞こえた。
「お疲れ。」
「あ、課長、お疲れ様です。」
北島の挨拶を受けながら、その手は私の隣にトレーを置き、椅子を引いた。
今日は総務課長と一緒だ。
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