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華やいだ街の雰囲気にも、沈んだ気持ちはどうにもならなくて、自然に俯き加減になる。
『ダメですよ、ちゃんと前見て歩かないと…』
ふと浮かぶ想さんの言葉。
少し目線を上げてみた。
はい、気をつけます。
でもね、想さん、私、今、ちょっと辛くて。
自分の中の嫌な部分も見てしまって、だけどそれは誰にも見せたくなくて。
想さんは、誰かに嫉妬する事なんて無いですか?
ルックメガネの閉まったシャッターの前に置かれた小さなクリスマスツリー。
一昨日までは遅くに通っても点いていた電飾の光が、昨日今日と消えている。
節電?なんて思いながら通り過ぎて駅へと急いだ。
駅前のスーパーで少し買い物をして、アパートの部屋に着いたのは 9時を過ぎた頃。
冷え切った部屋に、ため息と身震いを一度ずつ。
暖房を点けて、お風呂のボタンを押して。
部屋が温まるまで、とコートを脱いでベッドに潜り込んだ。
今年の冬はなんでこんなに寒いんだろう。
毛布をギュッと握って体を丸くした。
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