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「…あ、」
布団の中が段々温かくなってきて、つい眠りそうになっていた私の耳に微かに聞こえた携帯のバイブ音。
顔だけ出してベッドサイドの小さなテーブルの上にメガネと一緒に置いたそれに手を伸ばす。
「笙子かな…?」
呟きながら発信者の名前を見て、急いで体を起こした私。
「…想さん?」
これ、電話…、珍しい。
「…もしもし?」
「…鈴さん?」
耳元で響く、柔らかな声。
「想さん…。あっ、こんばんは。」
「こんばんは。今、大丈夫ですか?家、ですか?」
「はい。」
やはりベッドサイドに置いてある目覚まし時計を見ると、9時半を回ったところだった。
部屋の空気も大分暖かくなっている。
「想さんは?お家ですか?」
「実は、今、福井なんです。」
「あ、お仕事ですか?」
「分かりますか?」
「メガネと言えば福井県、ですよね。」
「さすがメガネ女子ですね。」
「ふふ…。」
口元が綻んで零れた小さな笑い声。
「此方にはウチがずっとお付き合いしている工房や工場があるので、年末の挨拶がてら打ち合わせに来ているんです。」
「そうなんですね…?」
…ちょっと感じる違和感。
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