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でもそれは、続く想さんの声にすぐにどこかに隠れた。
「今ホテルなんですけれど、此方は雪が降っていて…」
「雪、ですか?」
「はい、かなり強い降りで、此方でもこの時期には珍しいそうです。」
その雪のせいでは無いだろうが、電話の向こうはとても静かで、聞こえて来るのは想さんの声だけ。
「…静かですね。」
「そうですね。…それでかもしれません。」
「え…?」
「鈴さんの声が聞きたくなって、電話してしまいました。」
「……」
「鈴さん?」
私は空いている左手を頬に当てた。
…熱い。
「…迷惑でしたか?」
「…そんなこと、ありません。」
電話の向こうの想さんはどんな顔してるんだろう。
いつもの様に優しい笑みを浮かべてくれてる?
「想さん。」
「はい。」
「…ありがとうございます。」
「え…何、ですか?」
少しだけ揺れた想さんの声。
「…嬉しいです、電話。」
部屋の空気だけじゃなくて、冷えていた心の温度も上がった様な気がする。
「鈴さん…?」
「はい。」
「…何か、ありましたか?」
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