10 温かい場所

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「田上。」 「はい。」 レジを出て、暗い通路を先に歩くスーツの背中からの声を聞きながらその後ろを歩く。 「こっちに来て、経験のない子供服に思ったより早く慣れる事が出来たのは、高橋さんもだけど、特に田上が良くフォローしてくれたからだと思ってるんだ。」 少し低めの声が穏やかに響く。 「だから、甘えてたのかもしれないな。田上がいつも居てくれると思って、少し態度が違って見えただけで焦ったというか…。まあ、情けない上司だよな。」 「そんなことないですよ。」 背中に答える。 「…もう少し、」 課長が立ち止まり振り向いたから、私も立ち止まる。 「出来れば、もう少し、こんな情けない上司の面倒、見てくれないかな?」 それは少しおどけた様な声で。 非常灯だけの明るさでは課長の表情はわからない。 「…もう。本当に仕方ない上司ですね。少しだけ、ですよ?」 泣き笑いの私の顔も見えない暗さに感謝して。 「はは。…ありがとう、田上。」 …もう声が出せない私。 後は二人黙ったまま歩き、レジカウンターの照明スイッチをオフにして、休憩室に戻った。 ・
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