10 温かい場所

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ほんの数メートル先の想さんの表情は、裸眼とまた溢れてきた涙のせいで分からなかった。 慌てて涙を拭っていると、 「まったく、鈴さんは…」 そう言いながら近付いてきた想さんは着ていたコートを脱いで 「…?」 バサッと頭の上からすっぽりと私を包んで 「本当に、僕を困らせるのが上手ですね。」 ふわりと抱き寄せた。 眩しかったイルミネーションの光が消えて、風が止んで、街のざわめきが小さくなる。 私と想さんの間には、メガネを持った左手と涙を拭っていた右手に必要なスペースが残っていて、 優しくて、温かかった。 また溢れてそうになった涙をなんとかこらえて、息を整えた時、頬から離した手が想さんの胸のあたりに触れた。 手触りの良い薄手のセーター越しに伝わる想さんの鼓動は少し速くて… 薄手のセーター…? 「…想さんっ」 「はい、何ですか?」 身動ぎをした私の慌てた声にも丁寧に答えるこの人は…どうしてこんなに。 背中に廻していた手を離し、私を包んでいるコートの頭の辺りを少しずらして覗き込んだ想さんを見上げると、やっぱり笑顔で。 胸がドクンと音をたてた。 ・
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