10 温かい場所

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でも今は、それよりも。 「想さん、コート着てください。ごめんなさい、こんなに寒いのに…。」 私が頭からコートを外そうとした時、 「ね、あれ、ルックメガネの人じゃない?」 と、いう声が聞こえてきた。 そうだ、まだ人通りも多かったんだ。 私には分からなかったけれど、想さんは目立つし、もしかしたら注目を集めてるのかもしれない。 …どうしよう。 躊躇してコートの中から見上げる私に想さんは小さな声で言った。 「デパートの人も通るかもしれないですし…このままうちの店まで歩けますか?」 私が頷くと、私の顔が隠れるようにコートごと肩を抱き寄せて、想さんが歩き出した。 少し隙間がある位で前がほとんど見えなくて怖いけれど、想さんに頼って足を進める。 何度か躓きそうになる度、想さんの腕が力強く引き寄せて支えてくれた。 想さんに寒い思いをさせているのが申し訳ないのに、 温かい腕の中の居心地の良さに、 私はまた泣きそうになった。 ・
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