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でも今は、それよりも。
「想さん、コート着てください。ごめんなさい、こんなに寒いのに…。」
私が頭からコートを外そうとした時、
「ね、あれ、ルックメガネの人じゃない?」
と、いう声が聞こえてきた。
そうだ、まだ人通りも多かったんだ。
私には分からなかったけれど、想さんは目立つし、もしかしたら注目を集めてるのかもしれない。
…どうしよう。
躊躇してコートの中から見上げる私に想さんは小さな声で言った。
「デパートの人も通るかもしれないですし…このままうちの店まで歩けますか?」
私が頷くと、私の顔が隠れるようにコートごと肩を抱き寄せて、想さんが歩き出した。
少し隙間がある位で前がほとんど見えなくて怖いけれど、想さんに頼って足を進める。
何度か躓きそうになる度、想さんの腕が力強く引き寄せて支えてくれた。
想さんに寒い思いをさせているのが申し訳ないのに、
温かい腕の中の居心地の良さに、
私はまた泣きそうになった。
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