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背中でバタンとドアが閉まる音を聞いてまた緊張が高まる。
「想さん、これ。良かったら…」
「あ、ありがとうございます。」
包みを渡して、その後ブーツを脱ぐのにフラッとした私は、想さんに片腕を支えられてしまい、また焦るし顔も火照る。
「鈴さん、コート、ここに掛けてください。」
「あ、はい。」
コートをハンガーに掛けてから、ソロソロとリビングに入る。
他に誰もいないと分かっていたけれど、部屋の中に目を泳がせた私に気付いた想さんが少し困った顔をした。
「…すみません。きちんと言わなかったのですが、今日は…」
「聞きました、昨日、笙子から。」
「そうですか…。でも来てくれたんですね。」
「はい、行くって言いましたから、私。」
「…そうですね。」
想さんが嬉しそうに笑ったので、私もやっとホッとして笑い返せた。
「鈴さん、お腹空いてるでしょう?」
テーブルの傍に立った想さんが椅子を引いてくれる。
「はい。今日はすごく忙しかったので。」
「食べましょうか?」
「…美味しそう。」
テーブルの上に並べられた料理を見つめる私に、「ほとんどデリバリーなんですけど…」と想さんは慌てて言った。
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