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「…後で車で送りますので、これから僕の話を聞いて貰っていいですか?」 店長からだというケーキは、本当は多分笙子から。 私のお気に入りのお店の味に満足してコーヒーを飲む私に、向かい側に座る想さんが切り出した。 「…はい。」 急に緊張感が湧いてきて思わず姿勢を正す。 「…そんなに力入れなくても。」 想さんがクスクス笑うから、私の頬も少し緩んだ。 「鈴さん。」 「はい。」 「年が明けたら…そうですね、3月までには、僕は今の店から出なければなりません。」 「…え?辞めるんですか?あ、異動とかですか?」 「辞める訳ではないです。」 想さんは一口コーヒーを飲んで間を取った。 「ルックメガネの社長の名前は、藤野 泰明と言います。」 「…藤野?」 「はい。僕の従兄弟です。歳はひとまわり位上ですけれど。会長が僕の父の兄で、僕の叔父になります。」 「……」 「それで、僕も来年から本社の方に…、鈴さん?」 「あ、はい。」 「…驚きました?」 驚かない訳がない。 私はコクリと肯いた。 ・
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