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「想さん…」
私の顔を見て困ったように想さんが笑う。
「またそんな顔をして、鈴さんは…」
ローテーブルを挟んで座っているのに、想さんの手は軽々と私に届き、長い指が優しく頬を撫でる。
見つめられて動けない。
「少しは、寂しいと思ってくれますか?」
コクリと頷いたけれど。
少し、じゃない。
想さんが、ここのルックメガネに来てから一年ちょっと。
会ったのは私が用があってお店に寄る時と笙子たちと一緒の数回の食事会。
そしてたまたま通勤途中会った時に挨拶をする位で。
だけど、いつも見せてくれる優しい笑顔は格別で特別だった。
…想さんがいなくなるなんて考えてもみなかった。
「…私、」
最近の不安定な気持ちも、感じる寒さも、想さんが温めて落ち着かせてくれたのに。
…ずるいかもしれないけど、
自分の事しか考えてないかもしれないけど、
想さんと会えなくなるのは…嫌。
気が付けば零れていた涙を想さんの指が拭ってくれていた。
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