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「…ごめんなさい。大丈夫です。」
私が言って、想さんの手が離れた。
…ハンカチ、欲しい。
食事をしたテーブルの椅子に置いていたバッグを見て、腰を上げようとした私を制して想さんがサッと立ちあがる。
バッグを取って私に「はい」と渡すと、奥にある二部屋のうち左側のドアに姿を消した。
想さんがいないうちに、メガネを外して目に溜まっていた涙を拭いて、またかけ直す。
はぁ…とひとつ息を吐いた時、カチャっと音がして想さんが部屋から出てきた。
此方に歩いてくる想さんは手に何か持っている。
…メガネケース?
「…隣に座ってもいいですか?」
降ってくる声に「…はい」と答えて体をずらしてソファの端に座り直す。
一人分より随分広いスペースにクスッと笑いながら想さんが長い脚を曲げて其処に座った。
「鈴さん。」
体を少し斜めにして想さんの方を向くと、コトンと音がして光沢のある薄いブルーのメガネケースが置かれた。
「想さん…これ、は?」
「開けてみてください。」
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