11 目を閉じる

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狼狽えた私はどうしたらいいのか分からず、手にしていたメガネをそっとケースに戻した。 けれどそれを閉じる気にはなれなくて、指先で華奢なフレームをそっと撫でる。 「鈴さん…」 名前を呼ばれて顔を上げると、想さんが見ていたのは私の、指先で。 少し臥せられたその綺麗な二重瞼にドキッとして思わず引いた手を、想さんの手が掴む。 「…あ」 想さんが目線を上げて私を見る。 「鈴さん。」 「…はい。」 声が震えて恥ずかしい。 「…僕は、鈴さんが好きです。この店にはいられなくても、これからも鈴さんの傍にいたい。」 少し前から、まさか…と否定しながらも感じていた想さんの気持ち。 …何故? 聞きたいのに言葉が出ない。 身動ぎもせずにただじっと顔を見るだけの私に、想さんは優しく微笑んで、 「初めて会った時の事を覚えてますか?」 そう言いながら、握っていない方の手を伸ばして私の髪に触れた。 ・
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