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―――カンカンカン
一気に階段を上り踊場でチラッと下に視線を投げると、左手で非常扉のドアノブを引く課長が見えた。
それは至って普通の感じで。
…そうだよね、時間にしたら課長に抱き留められていたのは10秒?20…30秒なんてなかったよね。
課長も驚いて固まったんだ、きっと。うん。
そういう事。
あ、なんか足元が変だと思ったらメガネがズレてた。
…これって結構恥ずかしい。見られてないよね?
あれやこれやと考えながら、六階に着いた時には完全に酸欠で、足がガクガクしていた。
結局今日の昼食も2時を過ぎ、そして目の前には今日もまた北島がいる。
カレーを食べ終わって、水を飲んでため息ひとつ。
そういえば…と携帯を取り出して見ても、来ていたのはレンタルショップのお知らせメール。
で、もう一度ため息が出た。
「…なんだよ。」
「うん、…待ってるメールが来ないから。」
待ってるのはメガネの出来上がりのメール。
「…彼氏から?」
「え?…ハハハ、違うよ。メガネ屋さんから。」
「ふ~ん…」
また気の無い返事。
そういえば最近の北島は少し機嫌が悪いように見える。
…主任になってから、かも。
プレッシャーを感じてるのかなと一瞬思ったけれど、北島にそれは無いような気がした。
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