11 目を閉じる

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クリスマス・イブに想さんに渡されたメガネフレームは、その夜から私の部屋のベッドのサイドテーブルの上で存在感を示している。 「…明日も仕事ですよね。送って行きます。」 想さんは引き寄せていた手の力を緩めて、私の体を離しながらそう言った。 そして、顔を上げて想さんの表情を窺う私に、 「…鈴さん、今その目線はダメですよ。」 と、よく分からない事を呟いて。 ローテーブルからメガネケースを取り上げてパタンと閉めると改めてそれを私の手に握らせた。 「先程の返事は急ぎません。僕の事をよく見て、よく考えて貰えたら嬉しいです。…このメガネにはまだレンズを入れていません。返事を頂ける時にまた持ってきてください…」 ベッドに入り、ケースから出したフレームを眺める。 一度だけかけてみたけれど、本当にかけ心地が良く、少し調整するだけできっとピッタリになると思う。 眺めていると、送って貰った車の中で、先日の出張の時に、自分がデザインした私の為のメガネが造られていく過程を見て感激した事、そして私の声が聞きたくなって電話した事を話してくれた想さんの横顔が浮かんでくる。 ・
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