1645人が本棚に入れています
本棚に追加
「あ、田上さん…と、」
「あ、メグちゃん。」
駅近くの居酒屋の入り口を入ってすぐの所で、私と菜々子ちゃんの友達のメグちゃんの声が重なる。
年末商戦が終わると、デパートは元旦だけお休みで、すぐにお正月セール、クリアランスセールの準備など忙しい日々が続く。
ただセールも始まってしまえばそれなりに仕事も落ち着いてきて、私は閉店後久しぶりにこの居酒屋へと足を運んだ。
そしてメグちゃんの声が続く。
「…ルックメガネの藤野さん?」
驚きを含んだその言葉に私もまた一瞬驚いたけれど、ここに来るまでも何人かの女の子の視線を浴びてきたのを考えれば、メグちゃんが想さんを知っていても不思議はない。
想さんを見上げた目をメグちゃんが私に移して、代わりのように私が想さんを見上げる。
見つめ返してくる想さんに赤面しながら、メグちゃんを紹介すると頷いて「こんばんは」と笑顔の挨拶。
勿論メグちゃんの顔もみるみるうちに赤くなる。
「菜々子ちゃんと一緒?」
「あ、はい。あそこの席に。」
顔だけ見せていいかな、と想さんを見ると、そっと背中に手を添えて促してくれた。
実は想さんと二人きりで会うのはクリスマス・イブの日以来、一月中旬の今日が初めて。
年末は忙しい私に無理しないでと想さんが言い、年が明けてから笙子たちと一度食事に行っただけだった。
・
最初のコメントを投稿しよう!