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飲み会の翌日。
久しぶりにバイヤーの風間さんが売り場に顔を出した。
「商品の動きはどう?」
クリアランスセールも二週目に入って、アイテムの売れ具合や在庫のバランスなどを確認して、今後の商品導入などを話し合う。
売り場のレイアウトを確認して一通りの打ち合わせを終えると、風間さんの表情が変わり、気遣うように私に話しかけてきた。
「…気持ちは落ち着いた?」
凪子さんの事だ。
「はい。まだいろいろ考えてしまいますけど…、大丈夫です。」
「そう。…貝塚君にはやっぱり言ってないの?」
「はい。」
その時紳士服売り場の方から課長が此方に歩いて来るのが見えて、私と風間さんはその話題を止めた。
「打ち合わせは終わったのか?」
「ええ。」
「すまない、外せない会議があって。」
「大丈夫よ、田上さんとしっかりやっておいたから、後で聞いておいて。」
「分かった。頼むな、田上。」
「はい。」
頷いた課長は、風間さんに話しかけた。
「風間、少し話せるか?」
課長の表情が硬い。
私はいない方がいいのだろう。
「では、バイヤー、よろしくお願いします。」
挨拶をして、私は二人から離れるように歩きだしたけれど、すぐ近くのラックのダウンベストがハンガーから落ちかけているのを直そうと立ち止まった時、
聞こえた課長の声。
「凪子のことで…」
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