13 雪肌

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ピタリと動きが止まった自分の手が目に映る。 「えっ」と驚いた風間さんの声にハッとして、ベストをハンガーに掛け直し急いでその場を離れた。 少し歩いて振り返ると、二人は話しながら、通路を事務所の方へ向かっていた。 初めて聞いた課長の口からの凪子さんの名前。 『凪子のことで』 …ああ、やっぱり本当だったんだ。 今更だけどそう思った。 メグちゃんや風間さんの話を聞いて、分かっていたつもりでいたけれど、 本当は事実だと認めたくなかったのかもしれない。 だけど たった一言で、ストンと事実として納まった気がした。 だから、ここで止まる。 …先へは行かない。 「田上。」 北島が近付いて来たのに気付かなくて、急に名前を呼ばれてビクッとした。 慌てて顔を上げて見ると、北島の方が驚いた顔になっている。 「…どした?」 「え?何が?」 「情けない、っていうか…泣きそうな顔、してる、お前。」 「…ああ、」 そうなんだ。 「大丈夫。泣かないし。」 ここは仕事場だから。 しゃんと背筋を伸ばす。 ね、凪子さん。 「そっか。頑張れよ…ってのは変か。」 「ううん、頑張るよ。ありがとう、北島。」 私が笑ったら、北島も照れたように笑った。 ・
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