13 雪肌

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私にとっては緊急事態の電話だけれど、結局は私用だから、すみません、の意味を込めて課長に頭を下げる。 課長も、分かった、というように片手を上げてくれた。 相手が想さんだと分かるだろうか…。 出て行く様子がない課長に背中を向ける。 『…今から取りに伺います。』 「えっ?」 『お預かりして直しておきますので、帰りに寄って下さい。』 「…でも、それじゃ、」 『…僕が鈴さんに会いただけですから。』 「え…」 『取りに伺えば今日は二回、鈴さんにあえるでしょう?』 想さんの突然の甘い声に狼狽える私の顔は多分赤くなってる。 『すぐ行きますから、待っていてくださいね。』 そう言って電話は切れた。 「あっ、想さんっ。」 想さんに掛けた言葉は本人には届かず、私の後ろで机に向かっているだろう人には聞こえた筈。 通話が切れているのを確認してそっと振り向くと、椅子に座って腕組みをしている課長がこちらを向いていて、私の顔を見ていた。 「あ、すみませんでした。」 「いや、」 ゆっくり立ち上がった課長は、目線をメガネに向けながら私の隣に立った。 「藤野さんに?」 「…はい。取りに来てくれるそうです。」 「そうか。」 そして課長はフッと笑った。 …何? 「田上。耳、…うなじまで、赤い。いつもは真っ白なのに。」 ・
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