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「ごめんなさい、忙しいのに、わざわざ…。」
申し訳なさと、嬉しさと照れくささと…色々な感情が混ざって思わず俯く。
周りの視線が気になったのか、想さんは「鈴さん、こっちに」と高い棚の陰にと私を促した。
といっても背の高い想さんの首から上は隠れないのだけれど。
「あの、これなんですけど…」
顔を上げられないままメガネケースを差し出した私は、それを受け取った手の長い指が蓋を開けてメガネの状態を確認しているのを見ていた。
「鈴さん…」
…?
いつもより低い声にそっと顔を上げる。
「ケガ、しませんでしたか?」
「大丈…」
「…やっぱり。ここ、痛いでしょう?」
大丈夫、と言う前に鼻当てが当たる部分に近づく指先。
「えっ?」
「少し傷になってますね。」
慌てて自分の指で触ってちょっと押してみると少しズキッと痛みがあって思わず顔をしかめてしまった。
ダンボール箱にぶつかった時に鼻当てに押されたんだろう。
慌てていて鏡も見ていなかったし、課長も逆の方に立ってたから…
「…気付きませんでした。でも大したことないみたいです。」
恥ずかしさを誤魔化すために笑ってみせた私に、想さんは困ったような笑みを浮かべると、小さくため息をついた。
「本当に、気をつけて下さいね?」
「…はい。」
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